台湾の社会人野球チーム「覇龍隊」でプレーしている飯村将太投手。自らの決断で今年海を渡り、台湾でプロへの道を切り開こうとしている。
飯村投手のこれまでの歩みや、コーチとして在籍している金丸将也さんの教えと共に異国の地で挑戦する日々を追った。
(取材 / 文:白石怜平、以降敬称略)
高校時代は甲子園に出場し、大学で投手一本に
茨城県出身の飯村は、霞ヶ浦高2年の夏に甲子園へ出場。その後桜美林大学を経て、社会人のKMGホールディングス硬式野球部に入社し、昨季まで4年間在籍した。
高校では主に内野手だったが、当時のチーム事情から投手へと挑戦し、大学から投手一本となった。
高校時代からすでに最速142km/hをマークし、本格派投手としての片鱗を見せていた。「大学の4年間で球速や変化球も向上させました」とその成長を自らも実感していた。
「球速は上がって大学では148km/hまで来ました。変化球は球種を増やしました」
高校時代に投げていたのはスライダーとチェンジアップだったが、大学でカーブ、カットボールそしてスプリットと3球種を習得。
増やした代わりに「チェンジアップは投げられなくなった」と言うが、投球の幅は確かに広がった。
球速も高校時代から5km/h以上速くなっているが、一つの要因を挙げた。
「4年生になる春(2020年)にコロナ禍となってしまい、全体練習などがあまりできなくなってしまったので、1人でウェイトトレーニング中心に行うようになりました。
これを機にしっかりトレーニングも行う習慣がついて球速も上がっていきました」

卒業後はKMGホールディングスへと入社し、野球を続けた。
社会人野球では仕事と野球の両立を図る日々を送りながら、飯村は投手としてさらにステップアップした期間になったと語る。
「球速がさらに上がって152km/hまで伸びました。あとは3年目にチェンジアップをもう一度投げ始めました」
大学時代に一度封印した球をここで再び取り戻そうと試みた。
その理由を以下のように明かしてくれた。
「真っ直ぐと変化球の差がなかったので、緩急と奥行きを使いたかったんです。今もですがやっぱり難しいですね(苦笑)」
「新しい環境で挑戦を」4年目を終え決断
ただ、本格派投手として成長を続けていた一方で飯村に心境の変化が芽生えていた。
「昨年、4年目を終えようと時に『このまま続けても中途半端になるのでは』と感じるようになっていました。そうであれば、新しい環境でトライしようと思い決断しました」
ここで飯村が選んだ挑戦の地は日本ではなく、台湾だった。海を渡ることになった経緯について語った。
「社会人の同期と金丸将也さんが宮崎で繋がりがあって、その関係で移籍することができました」
金丸さんは、現在台湾の社会人野球チーム「覇龍隊」で投手コーチを務めている。

かつて広島で3年間(11年〜13年)プレーし、覇龍隊に入団する前は独立リーグ・九州アジアリーグに所属する「宮崎サンシャインズ」で監督も務めていた。
縁に導かれ飯村も覇龍隊へ入団。少年時代から抱いていたプロ野球選手という夢を台湾で叶えるチャレンジが始まった。
初めて過ごす異国での日々。文化や言葉の違いにも金丸コーチの存在が後押ししているのもあり、「戸惑うことはないですね」と順応していた。
主戦場となるマウンドでは、早速春季リーグを戦った。肌で感じる台湾の野球の印象をこのように語る。
「アメリカや南米の選手のような大味な野球をしていると感じました。とにかくフルスイングしてきます。小柄な選手でも全力で振ってきますから。そう考えると、日本は本当に緻密さがあるんだと改めて思いましたね」
金丸コーチの教えでリリーフエースに
飯村はチームではリリーフを務めている。社会人最終年で経験しているが、台湾でも継続しているのは金丸コーチの構想もあった。
「三振を取ることをミッションにして1イニング行ってもらっています。とにかく球が速く強いのが長所ですので、チームを活気づけて流れを呼び込んでもらうことを期待しています。
スタミナが9回まで続くようであれば、今後先発の可能性も十分あります。今は彼の将来も考えると1イニングに全力を出し切る方が上(プロ)にも行きやすいのではないかと考えています」
その期待通り、武器である速球を中心に台湾の打者を力でねじ伏せている。ストレートで空振りを取り、ベンチに堂々と戻る姿でチームの攻撃にも勢いをつけている。
金丸コーチも飯村の活躍を喜びとともに評価した。
「150km/hを超えるストレートを投げられるのはチームで飯村しかいないです。それはとても魅力的ですよね。0点で抑える試合が多くなったのは、僕の中ではすごく嬉しいことです」
また、変化球についてあるテーマを持って臨み、今も精度を上げている最中だという。
「スライダーの球速・軌道をストレートに寄せることを考えてい取り組んでいます。スライダーの曲がりが早くで打者に見破られたり、投げた瞬間浮いて入ってくると待って打たれてしまうので」

球種は大学から社会人にかけて増やしていったが、「今は後ろで投げているので球種を絞っています」と、スライダーとスプリットの2つで勝負している。
ただ、更なる飛躍のために金丸コーチがある提案をしていた。
「シュートを覚えようと。台湾はもう(4月時点で)30度近くあってさらに暑くなります。なので、球数を抑えられるようになれればと考えて勧めました。
マスターすれば球速アップにもつながる可能性もありますし、先発になった時でもファールを打たせたり、1球で打ち取れるボールを持っておけば有利になります。
今スライダー・スプリットは通用しているので、シュートを身につけて3方向に投げられれば幅は広がっていきます。プロになるのであれば身に付けておいたほうがいいと思うボールです」
秋のリーグに向けて「打者とどう戦うか」
5月中旬に春季リーグを終えた覇龍隊。このリーグは新戦力のお披露目の意味が濃い大会で、秋に行われる「ポップコーンリーグ」が本当の勝負となる。
今後の飯村が持つ伸び代について、金丸コーチは春季リーグの総括も交えながら述べた。
「今はヒッティングポイントのところで変化できるようになっているので、真っ直ぐでも変化球でも空振りを取れています。
捕手の構えたところに投げれてるので、これからバッターも踏み込んでくると思います。なので、インハイに投げ込めるコントロールをつけようと私も言っていて、そこにも正確に投げる技術もついています。
後はどう打者と戦うかです。自分ではなく相手と戦うことを身につけていけばどんどん抑えていけると期待しています」

飯村は今後の目標を「台湾プロ野球の舞台で投げることです」と名言。
上で挙がったシュートの習得など目指して、今も金丸コーチと二人三脚でステップアップを図っている。
(おわり)
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