引退後に悩まないよう「前もって準備を」
今年の4月24日、NPBは12球団の選手を対象に行った「引退後のキャリアに関するアンケート」の調査結果を発表した。
引退後の生活に不安を持っているかという質問に対し、「不安がある」と回答したのは38.5%、「不安はない」が24.2%と回答しており、後者は1/4に満たなかった。
競争の激しいプロ野球の世界、引退後の”セカンドキャリア”は永遠の課題とも言える。今プレーする現役選手に向けて、引退後における助言があるとすれば何かを訊ねた。
「引退してから思うのは、『前もって準備しておけばよかった』とか、引退後の生活にも関心がある方が、逆に現役生活に余裕ができたのではないかと思っています。
野球が終わっても次のレールがある。だから安心して全力で野球に打ち込める、という発想にもなれると思うんですけれども、現役の時は『今』のことに集中するからそんなことは一切考えられない。
なので難しいところではあるんですよね。厳しい勝負の世界で現役中に引退後のことを考えたらもう負け、という発想にもなってしまいますから。」
ただ、戦力外通告は否応なしにやってくる。平江さんも自身が経験した際、同じ状況になった選手の中に、所帯を持っている人もいた。翌年から突然収入が0になるという現実に直面し、焦っている光景も見てきたと言う。
「競技生活を終えるのが平均で30歳前後と考えると、それ以降の人生の方が長いです。それに向けての準備ができている人の方が、野球でもそれ以外でもより活躍できるのではないかと感じています。」
引退後も目標を持ち、迷った時期がありながらも自身の行動でやりたいことを実現してきた平江さん。今後成し遂げたいことを最後に聞いた。
「スポーツの力とアスリートの価値は無限大です。スポーツとアスリートの価値はもっと世の中で評価されるべきではないかという想いを持っていますし、これからもその価値を高めていきたい。それが何よりのやりがいです。」
自ら人生を切り拓いてきた平江さん。その過程には、ターニングポイントとなる人物やその中で得られた人生での教訓があった。
(最終回へつづく)
【プロフィール】
平江厳(ひらえ・いわお)1971年7月26日、愛知県豊橋市出身。
愛知・成章高から1989年に近鉄バファローズにドラフト5位で入団。プロ6年目の95年に一軍デビュー。7年目の96年に戦力外通告を受け、97年には単身アメリカに渡った。メッツとマリナーズの入団テストを受けるも不合格となり、現役引退。
その後は野球界を離れ、様々な職種を経験。米国でのメーカー勤務を経て06年にスポーツビズに入社、現在に至る。
現役時代は外野手で、身長182 cm・体重90 kg、右投右打。
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