「来ていただいた方達に”健康”になっていただきたい」元広島・今井啓介さん オープンした”第二のマウンド”に詰まった想い
17年まで広島東洋カープで12年間プレーし、この7月に鍼灸や運動塾などを展開する「カトレ奥沢」をオープンした今井啓介さん。
13年には33試合に登板し、球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出に貢献するも翌年から怪我などで満足いくシーズンが送れず、17年にユニフォームを脱いだ。
第二のフィールドは自身の苦労を元に選んだ治療への道だった。
(取材 / 文:白石怜平)
現役時の経験から治療の道へ
今井さんは17年、4試合の登板に終わり戦力外通告を受けた。チームが2連覇をした一方で自身には厳しい現実が待っていた。そして、ここでユニフォームを脱ぐことを決めた。
「16年に残った時に”来年1年が勝負”と思ったので、悔いのないように取り組もうと考えていました。最後に1年賭けようという思いでのスタートでした。元々カープで辞めようと思っていたので、戦力外になった瞬間は他球団でやる気持ちにはならなかったですね」
今井さんが新たに選んだフィールドは治療の分野だった。15年ごろから次の道を模索し始め、いくつかの選択肢があった中で「相当悩みました」と当時の心境を語ったが、最終的な決め手は自身の経験が元になった。
「僕は怪我が多かったので、様々な治療に行きました。遠征先にいるいい先生をご紹介してもらって受けてきましたので、そういった経験が自分にも合うのかなと考えました。あとは自分で頑張ったらその分登って行ける世界だと感じたいたので、野球と一緒ではないかと思ったんです」
さまざまな治療を学べた3年間
今井さんは18年から鍼灸師になるべく上京し、夜間の専門学校に入学した。日中は実践を通じて知識を得るため、ストレッチ専門店でアルバイトとしてリラクゼーションの仕事を始めた。
途中で系列店に移りながら客層を変え、ストレッチマシンを使いながら体を動かすサポートなどを行った。
野球界から離れ、違う業界にいるお客様たちと交流することも貴重な経験になったという。
「年配の方から有名企業のビジネスマン、あとは芸能系の方たちも来られていたので、 世の中の動きを知ることができましたね。野球しか知らなかったので、様々な世界の話を聞けてすごくいい経験ができたと思いました」
今井さんは鍼灸師を目指し学校に通っていたのと、当初の目的である治療の経験を積むため、3年生になる直前にストレッチ専門店から都内の鍼灸整骨院に移り働き始めた。
学校で学んだことを実践で活かすというサイクルができ、技術を習得していった。
「ストレッチ専門店では体を動かすサポートをして、鍼灸整骨院では実際に治療の現場に入らせてもらいました。この世界に入って思ったのは、治療というのは種類がたくさんあること。
なので、何が正解かと言ったらその患者さんに合えば正解になるんですね。そういう意味では一つだけの治療じゃなくて色々なことを学べたのは、この3年間いい経験だったと感じています」