「指を切断したかもしれない」前年にあった伏線
実は前年の12年夏、「いよいよ危ないな」と考えるきっかけがあった。イースタン・リーグでの試合中でのアクシデントだった。
「三塁を守っていた時に、速くてトップスピンのかかった打球がアンツーカー(塁間などに設置されている人工土)と芝の間で跳ねたんです。反応しきれなくて右の中指に当たってしまいました」
その時、脱臼と骨折を同時に引き起こし、かろうじて皮膚だけで残っていたような状態だった。翌日には入院し、手術を受けた。医師からは、
「奇跡だったよと。本来では指が切断していたかもしれない状態だったと言われて…自分にとっては選手生命に関わる大きな怪我でした」
最初は指先の違和感が残り、力が入らない感覚もあったという。「もうダメかもしれない」という思いもあったが、13年が終わる頃には感覚も馴染み、復活への手応えを感じ始めたタイミングだった。
「なので、『まだ現役を続けたい』と思ったんです。それでトライアウトを受けました」
3日以内にオファーが来なければユニフォームを脱ぐと決めていた内藤さん。期日になってもオファーの電話が鳴ることはなく、ここで野球人生にピリオドを打つことになった。
少年時代から憧れたベイスターズに入団し、8年間憧れのユニフォームを着てプレーした。現役生活をこう振り返った。
「とても良い経験をさせてもらった8年間でした。野球を通じていろんな人たちと出会うことができた。野球選手をやっていなければ経験できなかったこともたくさんありますし、今でもお話させてもらう機会があるのでありがたいです」
そして、今でもよく聞かれることのある戦力外通告時のエピソード。ここについても前向きに考えている。
「もう1年しがみついて結果はどうなったかわからないですし、タイミング的に今の仕事にも就けていなかったと思うので、結果的に良かったのだと思います」