―桐蔭学園高校、慶應義塾大学を経て、少年時代には“思い描いていなかった”というプロの世界へ。ドラフト1位でジャイアンツに入団してプレッシャーもあったかと思いますが、1年目から活躍される自信はありましたか?
半々ですね。絶対に、なんとか活躍しなくちゃいけないという想いはありました。
ただ、高校大学とはあきらかにレベルが違う。勝負の世界でどうやって生きていこうという不安ももちろんありました。
実際にキャンプに行ってみて、ビビりますよね(笑)松井秀喜さん、清原和博さん、広澤克実さん、石井浩郎さん…各チームの4番バッターがいて。この中でどうやったらポジションを掴めるのかなということは考えました。
―アマチュア時代とは違って、プロは毎日試合がありますよね。
学生時代は試合は週に2.3回くらい。練習より試合の方が楽だと思っていました。それで「毎日試合って楽なんだろうな」と思っていたら、壁にあたるんですよね。
プロ野球選手って仕事ですから、仕事の結果が目の前に突き付けられる。その苦しさもあり、毎日試合をするしんどさを感じました。
―スター選手揃いの当時のジャイアンツ、チームの雰囲気はどんな感じでしたか?
グラウンドでは一緒に戦うけど、それ以外はみんな別々。自分勝手にやるわけではないですが、野球に対してはそれぞれが“自分”を持っていました。1対1に強い選手の集まりだったかもしれません。
野球の話もほとんどしなかったし、教え合うなんてこともありませんでしたね。
時代の変化なのかもしれませんが、今はみんなで手を取り合って教え合う。常に一緒にいて、一緒に頑張ろうよ、という雰囲気で。結束力があっていいんでしょうけど、関係者に聞くと“束だと強いけど、1人1人になると勝てなくなってきている”という面はあるようです。
―特に刺激を受けた方はいますか?
松井秀喜さんです。プロ野球選手としては、彼が手本ですね。5年間、一番近くでプレーさせてもらいましたけど、1日の生活のリズムや結果に対する心の波がほとんど変わらないんです。
シーズンって長いですから、気持ちに波があると自分も疲れてしまう。
松井さんの、できるだけ同じ精神状態、同じ体のコンディションでグラウンドに向かうというのがプロ野球選手として大事なことなのかなと学びました。
悔しくないとか、嬉しいという感情がないわけではないんです、僕も松井さんも。ただ、あえてそれをあまり上下させずにいるんだなと感じました。
松井さんも僕もチームの主力という立場で何年もプレーさせてもらいましたが、気持ちが上下するのは、チームを引っ張る人間としてあまりよくないんじゃないのかなと松井さんを見て感じました。選手時代も、のちの監督時代も同じ気持ちでいたかなと思います。
―同時期に在籍した上原浩治さんや高橋尚成さんとは同級生ですよね。
彼ら2人はピッチャーだから…というのか、独特です。マウンドってグラウンドの中でも特別な場所ですよね。ピッチャーって我が強い、マイペースなくらいでないと務まらないポジションだと思います。
野球から離れると、そういった面は全く見えない陽気な2人ですけどね。でも、そういう強さがあるからこそ、メジャーリーグでも活躍できたんだと思います。
―今後由伸さんがまた監督を務められる時があれば、このお2人はコーチングスタッフの候補に上がりますか?
声は掛けると思いますよ。ウエ(上原さん)はたぶんやらないでしょうけどね…僕の下につくのはプライドが許さないから(笑)
ただ、僕が監督の時に選手として入ってきましたし、彼もユニフォームを着る、指導をするといったことが好きではあるので、本心はどこにあるのか分からないですけど…。
また次に監督をやれるようなことがあれば、同じ時代に共に戦った仲間たちとやりたいなとは思いますね。
今のベイスターズが三浦大輔監督以下、石井琢朗さん、鈴木尚典さん、相川亮二さん…1998年の優勝メンバーが戻ってコーチをされているんですけど、「いいなぁ」と思います。
自分の時もあんな風に…そういう時が来てもいいかな、と思ったりはしますね。まぁ松井さんは帰ってこないでしょうけど(笑)
本トークショーはJAIFA(公益社団法人生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)が主催しました
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