セカンドキャリアに向けた現役選手への助言
今まさにセカンドキャリアの支援をしている谷内田さん。現役選手に向けてどんなアドバイスがあるか、経験も踏まえて語っていただいた。
「誰にでも必ず合う職種・業界があるよと伝えたいです。ただ、自分でもしっかり調べて、自分で納得した上で企業選びをしてほしいなと思います」
またスポーツ界全体として、引退後を見据えて競技以外の活動を現役の間でも行う選手が増えている。
過去には現役中は野球のことだけを考えるべきという風潮も少なからずあった中、今変わりつつある思想についてどう考えているか。谷内田さんはこのように語った。
「僕は現役中でも将来のことをしっかり考えた方がいいと思います。考えるからこそ、『今の野球選手という立場は特別』だと感じられますから。
好きで続けている野球を仕事にできるのは今しかできない。だからこそ先を見据えて違う世界を見ておく事は大事だと思うんです。例えば、高卒ルーキーでも年棒500万とかドラ1ですと1000万とかもらえますよね。
野球選手以外で高卒の人が500万稼ぐとしたら、これだけ働くんだよってことを知れたら、選手であることに感謝してよりモチベーションにつながると思います」
人生のターニングポイントとは?
取材を通じて感じた谷内田さんは謙虚さを持ちあわせた人柄だった。そして、何かの出来事や関わってきた方達に必ず”感謝”と述べているところにも、その人間性を感じることができた。
これらの人間性が培われていった源が何かを紐解くため、何か転機になる出来事があったのかを質問した。すると、ルーツは学生時代に遡ると明かしてくれた。
「母親が何があっても野球だけはやらせてくれて、強豪の北照高校に入らせてもらった。そこでまず人生が繋がったと思います。こんな自分でも野球を続けさせてもらって、高校では2年生の夏から試合に出してもらっていたんです。そこで気づいたのが『先輩の代わりに自分が出ているんだ』と。その時に”人のためにやらなきゃ”と責任感が芽生えてきました」
そしてプロに入ってからは、その責任感に”感謝”が加わった。
「プロに入って親元を離れて生活するようになって、親のありがたみや道具の大切さも感じました。あと、選手として裏方さんと接する中でマッサージしてくれるトレーナーさん、あとは警備のみなさんもですよね。そういう方たちがいなかったら、成り立たないわけですから。
試合1つをやるためにこれだけの人たちが動いているんだなと思いましたし、そういった視点を10代の頃に気づけた。以降の人生において本当に幸運なことなのだと思いました」
そして、もうひとつの転機については現役引退を決めた時だった。清々しい気持ちを思い出しながら
「引退する時には『よし、次のことをやろう!』と思えた。未練なかったので。自分の中で限界と思ったところまで挑戦したので、完全燃焼できた。好きな野球をそこまでできたんですから、こんな幸せなことないです」
「アスリートの心のより所に」
明るい声とポジティブさで満ち溢れたインタビューの最後、谷内田さんのビジネスマンそして野球人としてのこれから目指す目標を伺った。
「ビジネスマンとしては、スポーツ界のみならず、何かを極めようと挑戦する人たちの心のよりどころと言いますか、終わった後でも『先のことは大丈夫だよ、一緒に探すから』となる会社・組織にしていきたいです。
野球人としては、今後も普及活動を続けたいです。将来的には海外とかの人たちに野球をやってほしいし、”野球ってこんな楽しんだ”と思ってもらえるような人を国内外問わず増やしていきたい。そう考えています」
谷内田さんは今も感謝と謙虚さを胸に、朝の挨拶から1日をスタートしている。その元気が、これからのアスリートの未来を明るい道へと照らしていく。
(おわり)
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