9月15日、都内で開催されたトークイベント「プロ野球温故知新」に金子侑司さんが登壇。
ライオンズ一筋を貫いた金子さんが、この日を待ちわびたファンを前に12年のプロ野球生活について語った。
【MC/文 中嶋絵美(フリーアナウンサー/フリーライター)】
このイベントはプロ野球やプロレス関連のイベントを行う「株式会社シャイニング」が主催。
金子さんの引退試合が行われた日からちょうど1年の節目とあり、会場には引退試合も球場で観戦していた、というファンも多く詰めかけた。
笑顔と涙の詰まった引退試合-「まさか回ってこないと思っていた打席」あの日を振り返る
現役を退いてからの1年は「辞めた瞬間からめっちゃ早かった」という金子さん。「現役時代は1日1日が勝負でしたし、プレッシャーもあったし、一週間がとても長く感じていました。」
ライオンズ一筋の現役生活。引退セレモニーでは「12年間、本当に夢のようで幸せな時間でした」と話していた。
引退試合となる一戦への出場にあたっては「守備が一番緊張していた」と振り返る。「最後の最後でエラーできないでしょって(笑)三振はしてもいいけど、エラーは恥ずかしいので緊張していて。
一発目で飛んできたんですが、気持ちも少し前のめりになっていて、結構勢いよく前進して、ちょっと上の方で獲ったんです。“危な~”と思って、苦笑いしていました。」
レフト線際への飛球のスライディングキャッチについては「ここしかないと思って、うまく合わせて獲りました !」と華麗なプレーの裏側を明かした。
8回、チーム一丸で繋いだ“奇跡の最終打席”についても尋ねた。「まさか回ってこないと思っていました。でも攻撃が始まる前にみんなが「最後もう1打席まわすぞ」と言ってくれていて、あれよあれよと打順が進んでいった。
“いい仲間だなぁ”嬉しいなぁ”としみじみ思ってきて、自分の打席の準備をするのを忘れちゃうくらい(笑)前のバッターが元山(飛優選手)で、ゲッツーにならなければ回ってくる、という状況になった。元山がバッターボックスに向かう時にこちらを見てきて目が合って。
「こいつ振らんな」と思ったら、案の定見逃してくれて…(元山選手は見逃し三振)本当に、嬉しかったですね。」
「その夢は俺が叶える!」-父の夢を受け継ぎ、プロ野球希望球団に入団
子供のころから野球、ラグビー、サッカー、バスケ、テニスと様々なスポーツを経験したという金子さん。父親が「野球選手になりたかった」ことを知り、「その夢は俺が叶える!」とプロ野球選手を志したという。
京都府出身の金子さんだが、希望球団は「ライオンズでした!」と明かした。その理由については
「2008年の日本シリーズがライオンズ対ジャイアンツで、テレビで見ていたんですが、その時に目に入ったライオンズの選手の後ろ髪が全員“茶髪・金髪”で、なんだこれは!と衝撃を受けて(笑)
かたや“紳士たれ”のジャイアンツを、茶髪金髪軍団のライオンズがやっつけていくわけですよ。“わぁ~、かっけ~!”と思って、そこからずっとライオンズがいいと思っていました。」
念願叶って指名を受けたライオンズだが、いざ2013年に入団してみると「みんな黒髪・短髪だったんです。先輩に「髪が長かったり、染めたりしていましたよね?」と聞いたら「そのブームは終わった」と言われました(笑)」

プロのレベルの高さについては「入団当初はしんどいなと思いました。練習量もそうですし、テレビやゲームで名前を見ていた有名な人たちばかりだったので、最初はとにかくついていくのに必死でしたね。」
そんな中、プロ1年目から勝ち取った開幕1軍の舞台。プロ初打席で初安打を記録した。
「漫画やアニメで足が震えているシーンがありますが、まさにあれです!本当にあれくらい、ガクガク震えていましたね。打った後に走っているとき、ファーストベースが50メートル先くらいに感じました。」と、緊張の初打席についても回顧した。
そのほか、実家を離れて初めての寮生活やベルーナドームの“虫問題”、盗塁王獲得のエピソード、更には今年のライオンズの戦いなどについて、金子さんらしくユーモアたっぷりに語り、約1時間のトークイベントはあっという間にクロージングを迎えた。
離れてから見るプロ野球は「想定以上に楽しい」「ファンと同じ気持ちで」
現在は解説やイベント出演などをこなす金子さん。外側から見るプロ野球は「自分が想定していた以上に楽しい」と話す。
「小さいころから野球をやってきたが、やる方が楽しいと思っていたのであまり中継は見る方ではなかった。けど、実際にプロの世界から離れて見ると、楽しいですね。
今は一緒にプレーしていた仲間が多いので「がんばれ!打てよ!」とか、みなさんと同じような気持ちになりながら見ています」と、自身の現役時代をファンがどのような心境で応援していたのかも肌で感じているようだ。

トークパートの後には私物へのサイン&写真撮影会を実施。時折ステージ上と客席の間で、ファンが持ち寄ったアイテムについての会話も交わしながらプログラムは進んだ。
2025年7月7日に自身のファンクラブを立ち上げ、観戦イベントを開催するなど、現役を退いても今なおファンに寄り添う金子さんらしさがあふれた、あたたかい笑顔に包まれた空間となった。
(おわり)
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