かつて巨人で4年間プレーした谷内田敦士さん。現在は総合人材サービス会社である「KSキャリア株式会社(ケイアイスター不動産グループ)」で、人事・採用を担当している。
巨人時代は育成選手だった谷内田さんは支配下選手を目指した。その間、名だたるスター選手たちなどからプロとしての心構えや技術を肌で感じてきた。
今回は巨人入団から現在の活動を2回にわたってお送りする。前編では現役時代の4年間を振り返った。
(取材 / 文:白石怜平)
07年、育成ドラフト3巡目で巨人に入団
谷内田さんは、北海道の強豪・北照高校で捕手として活躍し、07年の育成ドラフト3巡目で巨人に入団した。支配下選手ではなく育成選手としてのプロ入りであったが、憧れの球団からの指名に喜んだ。
「育成でもプロに入れたので、純粋に嬉しかったです。社会人野球も決まっていたのですが、『もちろんプロ野球、ジャイアンツでしょ』という気持ちでした。いい意味で世間知らずだったのだと思います(笑)」
迎えた08年1月、新人合同自主トレで早くも衝撃を受けることになった。当時の高校生ドラフト3巡目で同期入団となった中井大介さん(今季よりDeNAファーム外野守備走塁アシスタントコーチ)とのやりとりが最初だった。
「中井くんと最初にキャッチボールをやった時に、”え、”と思って。自分では肩の強さは誰にも負けない自信があったんです。でも、自分と同じくらいの肩の強さを持った選手が同級生でいるんだというのが最初の衝撃。そこで、自分はまだまだなんだと思えましたね」
また、同じく同期入団でこの年に史上初の”プロ初打席サヨナラ本塁打”を放った加治前竜一さんの打球も見て、「すごい世界に入った」と感じたという。
G球場で一軍投手陣の捕手役を務める
1年目は体づくりを中心に行いつつ、当時はイースタン・リーグの若手を選抜した混合チーム「フューチャーズ」の一員にも選ばれていた。実戦経験を積みながら、直近の目標である支配下選手登録に向けて汗を流す日々を送った。
また、谷内田さんのポジションが捕手であったことも大きな経験を呼びよせた。ジャイアンツ球場で調整する一軍投手陣の球を受ける機会に恵まれた。
「当時は上原(浩治)さん、高橋尚成さん、内海(哲也)さん、東野(峻)さんなど錚々たる先輩たちの球を受けさせてもらう機会だったり、試合形式で打席にも立たせてもらいました。
印象に残った球は門倉(健)さんのフォークで揺れながら落ちるんですよ。『俺の球舐めてただろ(笑)』って言われたんですが、”これがプロか”って思いました」
特に、ある先輩から受けた影響は大きかった。考え方の面でも”一軍の投手”とはどんな選手なのかを直接教わった。
「ファームでは普段は大きく構えていたんですね。ただ、一軍の投手は違いました。豊田(清)さんと組んだ際に、低め大きく構えたら注意されたんです。『俺たちはボール1個2個を出し入れする世界でやっているから、考えてやってくれ』と。
あと広島に移籍するときにキャッチボールをしてもらったんですが、『谷内田の投げるボールはこうだからあの球になるんだよ』って詳しく教えていただいたりもして、細かい考えを持って野球をしているんだと気づきましたね」
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