5月中旬、都内で行われたトークイベント「プロ野球温故知新」に荒木雅博さんが登壇。
現役生活23年、コーチ時代を合わせれば28年在籍した中日ドラゴンズでの数々のエピソードを披露した。
【MC/文 中嶋絵美(フリーアナウンサー/フリーライター)】
このイベントはプロ野球やプロレス関連のイベントを行う「株式会社シャイニング」が主催。
東京ドームでジャイアンツ×ドラゴンズのデーゲームが行われた夜のイベント開催だったため、試合観戦後に駆け付けたファンの姿も見られた。
大きな目標は立てない-「その時々でやるべきことをやり続けた結果」の活躍
プロ入り直後の合同自主トレ、キャンプで感じたプロ野球のレベルについて「すごいなぁと思いました、と少し前まで答えていたんです。でも、よくよく考えたら大してすごいと思わなかった。
やっていけると思ったわけではないですが、プロってもっと飛ばすんだろうな、もっとスピードのある守備をするんだろうなと思っていた。
プロのイメージが自分の中でものすごく高かったんです。“代走くらいならプロでやっていけるな”と思ったのが、正直な感想でした」。
1軍で活躍できるようになったきっかけを問うと「外野をやってみたり、スイッチヒッターに挑戦してみたり、それぞれの場所で色々なこと感じながら、5年間積み重ねたものが6年目に出たんだろうな、と」。
ポジションに対するこだわりについては「どこでもよかった。せっかくプロ野球に入ったんだから1軍でやらなきゃいけない。代走だけでも、守りだけでも1軍にいたい。
ただただその時にやらなければならないことをひたすらやり続けた結果、最終的にレギュラーが獲れました」。
昔から「大きな目標を立てる人間じゃなかったんです」という荒木氏。“レギュラーを獲る”という目標も立てていなかったといい、
「獲れたらいいな、くらいです。ただ目の前のこと、今一軍に残るためには何をすれば良いのかを考えて、小さな目標設定はしていました。それをひとつずつクリアしていった結果の23年間だったと思います」

「終わったなと思った」-落合監督就任決定時の心境と、心を引き戻した言葉
2004年シーズンから落合博満氏がチームの指揮を執ることが決まった。その時の心境は「終わったなと思った。三冠王を獲った人ですよ。僕は打てない人。使ってもらえないじゃん、と思いました」
しかし、就任初日のミーティングで落合氏が語ったのは“終わった”と思った荒木氏の心を引き戻す言葉だったという。
「“三拍子揃った選手は求めない。自分の良いところだけを伸ばしてくれ。それを積み重ねたときに強いチームになる”と。その言葉を聞いて、もしかしたら俺出られるんじゃないか、と思いました」。
落合監督の下、鬼のような練習をすることになるが「常々、キャンプに行ったときに“こんなに楽なんだ”と思っていたんです。
1日野球やって、こんな楽な気持ちで終わらせていいのかなって。落合さんが来て“これがプロ野球のキャンプだよね“と思ったし、楽しかった」。
最も印象に残っている練習を問うと「やっぱりノック。根性を養われた感じです。落合さんって練習に飽きないんですよ。
2時間経っても全く変わらず、ずーっと同じ動きを繰り返す。“同じことをやり続けさせること”に長けていると思います。同じことをやり続けるからこそ良さもわかるし、ダメなところもわかる。そこはすごく勉強になりました」
鉄壁の“アライバ”コンビ-「井端さんがいなければ、ここまで長くやっていない」
荒木氏の現役生活を語る上で欠かせないのが二遊間を組んだ井端弘和氏の存在だ。「仲は…良いよ(笑)最近もうこの話も飽きたねって話しています(笑)」
井端氏については「野球観が素晴らしい人。今でこそデータってたくさんあるけれど、当時はまだざっくり。
その中で、はじめは井端さんの考えを聞いて、井端さんに合わせていました。考え方が違うと守備として成り立っていかないので。
そうやって3年4年…と過ごしていくうちにしっかりとしたポジショニングを覚えていきました。井端さんがいなかったらここまで長く現役でやっていないでしょうね」

他にもアライバコンバートの裏側や2025年のドラゴンズの展望、荒木氏が見る“現役最強セカンド”、ご自身の今後についての想いなど、盛りだくさんのトークを展開。
最後はファンに向けて「ユニフォームを脱いで2年目。現役引退から7年。これだけ多くの方に集まっていただき幸せです。
今後またユニフォームを着ることがあれば、僕の中ではドラゴンズのユニフォームしか頭にない。そのために一生懸命修行をしている最中です。
多くの方に応援していただいていることを心に置きながら、しっかり準備をして戻りたいと思います」と期待高まるメッセージが送られ、トークイベントは締めくくられた。
トークパートの後にはサイン&2ショット写真の撮影会が開かれ、荒木氏の若かりし時代のグッズなど、貴重なアイテムを手にしたファンたちが笑顔で列を作っていた。
(おわり)

この記事へのコメントはありません。