3月某日、大人気野球YouTubeチャンネル「トクサンTV」の収録が行われた。今回のゲストは日本ハム・巨人・中日の3球団で活躍し、昨年まで巨人で打撃コーチを務めた小笠原道大さん。
プロ通算打率.310、2120安打の大打者が自らの打撃について語った。今回は動画本編の一部を2編にわたってお送りする。
(写真 / 文:白石怜平)
永久保存版の「打撃全解剖SP」
今回実現した撮影はDAZNとのコラボ企画となっている。新プラン名である「野球一本」にちなんで、”ここぞの一本”を打ち続けてきた小笠原さんの技術に迫ることになった。
トクサンTVでは“打撃全解剖SP”として、小笠原さん自らが技術を解説する。30分超えのロングバージョンで永久保存版の内容となった。
小笠原さんは96年ドラフト3位で日本ハムに入団。99年にレギュラーに定着すると、”バントをしない2番打者”としてビッグバン打線の一翼を担った。
以降3割30本をマークし続け、球界を代表する打者の地位を築き、06年には第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本の世界一、そしてファイターズを北海道移転後初の日本一に導いた。
07年に巨人へ移籍以降もその実力を発揮し、第2回WBC連覇・巨人3連覇に主軸として大きく貢献した。14年に中日に移籍すると、代打での6打数連続安打や9打席連続出塁を記録するなど代打の切り札として活躍。15年に現役を引退した。
プロ通算成績は実働19年で打率.310(歴代9位)・378本塁打・1169打点。首位打者2回、本塁打王・打点王をそれぞれ1回ずつ獲得し、2120安打で名球会入りも果たしている。
豪快なフルスイングと確実性の高い打撃でファンを魅了し、野球ファンの誰もが憧れる選手の一人だ。
日常生活での動作から学ぶインハイの打ち方
まずは打席での目付けについてからスタートした。小笠原さんは、150㎞/h台のストレート・140km/h前後のフォークというように、まずは球種と球速の2つを頭に入れて打席に立つという。
そのうえで、投球が来るまでの時間が最も短いインハイを待つと答えた。その根拠をこう説明した。
「相手もプロだけれども100%はないですよね。ということはまず命を守らないといけない。変化球を待って150km/hを超える真っ直ぐが頭に来たら、反応が遅れてしまえば野球をする以前の問題になってしまいます。そういうことも踏まえてインハイだけは(待つ意識から)消さないです」
内角の厳しい球でも鋭い回転で振りぬき、切れない打球でスタンドへと運んできた小笠原さんのバッティング。では、インハイをどのように打つか。日常生活でもある例を用いながら解説した。
「簡単にいうと、顔の前に飛んでいる虫を払うイメージ。前の(左打者なら右)手の甲を先に持っていく。その手の甲が顔の前に抜けてくればいいんです。その時バットを上げずに自然に回ります」
トクサンがバットを持ち実際に体を動かしてみると、体幹を軸に綺麗な回転を見せた。小笠原さんも「打つ形になったでしょ?」と語るように、明解な説明で吸い込まれるように理解を深めていった。
力を溜めておくためのベストな場所を探す
続いて速い球を待っていた時に遅い球が来た際の対応について。
「まずは瞬時に判断した上で、遅い球であれば我慢して体の近くまで来たら振る」とシンプルに説いた。トクサンは小笠原さんを打席へと導き、実演をお願いした。
「(両膝で)間をつくる。重いものを背負って耐える時はバランスをとると思います。力は後ろや左右ではなく前(投手側)に向かわないといけない。なので振り出す時には両足に体重がかかっている状態になります。この形から振りに行く」
それでも相手がタイミングを外すためにカーブなど遅い球が来ると、体が前に突っ込んでしまう。そうならないためにどう下半身を使っていたのか。
小笠原さんの打撃を見た人なら誰もが思い浮かぶ”あのシーン”につながっていく。
「(軸足を)踏ん張ってます。溜めているけどもバットは残っている。それで(外角に緩い球が)来たら振り抜いていきます」
ここで小笠原さんがまとめたポイントは「踏ん張った形の溜めた状態をつくる」ことであった。
最終的にはバットを振らなければならない。その動作をスムーズに行うために、力を溜めておくベストな場所を探すことが大切と語った。
「スタンスが狭くても広くても、両足が大事。それを支えているのが全部足の裏です。地面に接地しているのは足なので、そこが安定していればどんなコースでも対応できます」
続いては小笠原さんの練習方法についての質問へ。以降スイングの軌道から打ち終わりまでのプロセスを通じ、その奥義が徐々に明かされていく。
(つづく)
▼小笠原さん「打撃全解剖SP」はこちらから▼