引退時からあったもう一つの目標
アメリカで仕事し、暮らすという目標は叶えた。ただ、平江さんの中では次の構想が生まれていた。
「僕の中で引退してから頭のどこかで、『スポーツに関わる人生がいいなぁ』というのもあったんです。最初の目標だったアメリカでの生活は経験できたので、次はやっぱりスポーツだなという気持ちが湧いてきました。」
そんな想いを持った中で出会ったのが今も勤めるスポーツビズの方だった。スポーツに関わりたいという想いを伝え、スポーツビズもプロアスリートの経験がある平江さんを必要とし、入社することになった。
スポーツビズでは、最初アスリートのマネジメントを担当した。昨年、TBS系ドラマ「オールドルーキー」が話題を集めたが、まさにそのストーリー通り、元プロアスリートが裏方として選手たちを支える立場になった。
そこに抵抗感はなかったのかを平江さんに訊いてみた。
「僕はね、全くないんです。立場がわかるからこそ、リスペクトできます。野球界を離れてから、『スポーツはもっと世の中で評価されるべき』とずっと思っていました。
昔であっても活躍した人は、本来その栄光はずっと続くべきなのに、引退してから途絶えてしまうように感じるのはもったいないなと感じていました。
引退してからも活躍できる場がある。それを伝えたい。なので、裏方に回る事には全く抵抗なかったです。」
現在は60人のアスリート・文化人が所属しているスポーツビズは、競技もさまざま。
当初平江さんは、常時5~6名のアスリートを担当していたが、その中には現役・OBを含めたプロ野球選手は0。これは平江さんが意図したことであった。
「入社時に、できれば野球以外を担当したいと僕から言いました。偏った人間になりたくなかったのと、さまざまな競技の方たちがいるのがこの会社の魅力なので、野球以外の世界を知りたいと思ったからです。」
マネジメント業務を通じて、他競技のアスリートや関係者たちと交流を深めてきた。これまでと違う世界を見ることで、感じたことがあった。
「野球界が恵まれていることに初めて気づきました。オリンピックでメダルを獲ってもその後ずっと苦労している選手が何人もいることを知りましたし、仕事を通じて自分の視野が広がっていきましたね。」
今年、スポーツビズに入社して17年が経った。
「会社員ですので、会社に利益をもたらす努力は当然なのですが、営業して案件を獲得できればアスリートに喜んでもらえるので、そのために頑張っています」
平江さんは「今の仕事に誇りを持っています」と笑顔で語ってくれた。やりがいについて訊くとこう答えた。
「アスリートのマネジメントってここで終わりっていうのがないんです。ステージが変わるごとにマネジメントプランも変わってきます。
行く営業先も変わってくるし、アスリートが求めてくることも変わってくるので、終わりがなくて正解もない。しんどい部分ではありますが、それが逆に面白いのかもしれません。」