「台湾の投手を世界の投手王国に」元広島・金丸将也さん 台湾の社会人野球で感じた選手のポテンシャルとやり甲斐とは?

現在台湾の社会人野球チーム「覇龍隊」でコーチを務めている金丸将也さん。昨年は地元宮崎の独立リーグ球団「宮崎サンシャインズ」で監督を務め、現場へと復帰した。

金の卵を発掘しエースへと育てるなどチーム強化に勤しむ中、ある事情から自ら現役復帰も果たした。

そして今年7月から海を渡り、世界の投手王国にするため奮闘の日々が始まっていく。

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「10年前より今のがコントロールが抜群にいい」

昨年途中、指揮を執っている中でもうひとつ大きな出来事が訪れた。それは金丸さんの”現役復帰”だった。

「投げられる投手がいなくて、自分が投げざるを得ない状況になりました。相談を受けたので、『1ヶ月だけ待ってくれ』と言って13kg絞りました。選手なんて10年以上離れているので最初は『やりたくない』って言いましたけども(笑)」

現役復帰のためにストイックな姿勢を見せた

さすがはNPBの世界に身を置いた投手。2試合に登板し、3イニングを無失点に抑えた。指導者を経て引き出しがたくさん増えた中での復帰マウンド。そこで気づいたことがあった。

「球のコントロールの仕方など『なぜ10年前できなかったのだろう』と。体を使っていなかったので、久しぶりに投げることで痛みを感じますよね。

その時に『こういうところを使っていたのか!』と体感したんです。なので次はこのトレーニングをしようと分かった。現役に復帰してよかったと思えました。(広島にいた)13年より、23年の方が抜群にコントロールがよかったです」

結果も2試合に登板して3.1イニングを無失点に抑えた。10年以上のブランクを感じさせない投球で言い訳を一切見せなかった。

「選手たちの見る目も、『この人NPBにいたけどどうなんだろう』と思っていたでしょうし、『変なところは見せられない』と思ってマウンドに上がりました。

選手たちは『まぁ当然だよね』という感じだったかもしれないですが、最低限の威厳は保てたと思います(笑)」

「能力の塊」台湾投手のポテンシャルの高さ

しかし、今年の6月に監督辞任並びに退団が発表された。前年よりも勝ち星を多くすることを目指して臨んだシーズン。自身の思いとは裏腹に黒星が先行してしまっている現状から、責任を取ることを決断した。

それでも、野球の神様は金丸さんの近くにいた。現在務めている「覇龍隊」の投手コーチ就任オファーが舞い込んできた。異国の地での挑戦。その時の心境を語った。

「宮崎のOBの方々から連絡が来たのですが、『まだ指導者やったらどうだ?』ということで紹介いただきました。日本から離れるのは不安しかなかったです(笑)。でも多くの方の助言もありましたので、行って頑張ろうという気持ちにさせてもらえました。

分からないところはジェスチャーも交えながら、選手兼通訳の方もいますのでその方々に協力してもらって、たくさん伝えたいと思って今過ごしています」

台湾での金丸さん(本人提供)

7月から早速台湾へと渡った金丸さん。最初に驚いたのは、日本とのカルチャーの違いだったという。

「選手に質問を受けたのですが、『練習終わったらみんなでバスケやってもいいですか?』と。もう一人のコーチに聞いたら『レクリエーションでやっています』とのことなので、怪我しなければいいよと。

日本では怒られると思うんです。ただ、台湾ではリフレッシュの方法として他のスポーツをするそうなんですね。アップの前にリフティングをしたり輪になってサッカーもするんですよ。なので全然文化が違いましたね」

また、違いを感じたのは文化の面だけではなかった。実際に指導する選手の姿勢にも感銘を受けた。

「台湾ではものすごく選手が興味を持って聞いて来てくれることです。それをすることで何が起きるかまで聞いてくれます。意味を理解したら自主的に取り組んでくれます。

主に試合に入るまでの準備、打者に対する心構えなどを伝えているのですが、どんどん吸収して上達しているのでとても嬉しいです」

台湾の選手たちの前向きさに感銘を受けている(本人提供)

日本では監督まで務め、そこから台湾に渡り指導を続けている金丸さんであるが、大切にしている考えがあった。選手たちの反応と共に明かしてくれた。

「僕は必ず言わないようにしているのは『日本ではこうだったよ』と、日本を基準にしないようにしています。ただ、宮崎の時から指導方針を変えたことはないです。

選手たちは『今まで教えられたことがない』と言ってくれるのですが、特に試合に向けた準備というのが新鮮に感じているそうです」

明るく笑顔で取材に応えてくれた金丸さん。その人柄に選手たちはどんどん惹き込まれているように感じた。前向きと語る選手たちに早速心に響かせている話があった。

「投手は体幹が大事だと僕は唱えているのですが、台湾の選手は腹筋が50回もできないのに145km/hを超える投手がたくさんいるんです。もう能力の塊ですよね。

それで、腹筋を思い切りさせた後にピッチングをやると、足を上げた時に(腹筋を)使っていることを実感できます。すると『これだけ腹筋使うのが分かりました』と言ってくれるので可愛いですよね(笑)実践させて納得してもらうのが大事なのだと思います」

「アメリカや日本よりも上であることを証明したい」

台湾でコーチに就任して約3ヶ月、ポテンシャルの高さと成長スピードの速さに向き合う日々が続いている。野球人・金丸将也としての今後のビジョンを伺った。

「台湾の投手を世界で一番に引き上げて”投手王国だよ”と言いたいです。世界No.1のリーグはメジャーリーグだと思いますがその考えを覆したい想いがあります。

大谷翔平選手があれだけ活躍して、WBCでも世界一に輝いたので日本や他国の野球も認められつつありますが、今携わっている台湾の野球が”日本の次に”ではなく、”アメリカや日本よりも上”ということを証明したいです」

今も台湾の地で奮闘を続けている(本人提供)

台湾を世界の投手王国にするため、今も日々奮闘している金丸さん。もはや不安ではなく、期待や楽しみへと変わり日々野球と向き合っている。

(おわり)

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