【インタビュー】第4回 元ヤクルトスワローズ・宇佐美康広さん③

”売らずに売る”不動産営業時代の経験が礎に

ロクハチ野球工房ではメーカー約10社のグラブを取り扱っている。「ここに来ないと買えないもの」を選び抜いている。また、アドバイスも行い最適なグラブ選びをサポートしている。

「ポジションやどんなプレースタイルなのかを聞いて、いくつか提示してあげます。どれがいいか聞かれたときには『自分が実際に手をはめて、しっくりくるのが一番良い』と伝えています。それで感覚に合うのが一番なので」

また、多く寄せられる相談は、”どんなグラブを選んだらいいか”・”どんなサイズ感がいいのか”というものだという。

「よくありがちなのが、将来大きくなるから予め大きめのグラブを買えばいいという考え方。それはやめたほうがいいですと伝えています。ブカブカの靴で100m走れないのと一緒で、身体に合ったサイズのグラブでプレーしないと上達を妨げてしまいますから」

戸田市の「ロクハチ野球工房」。所狭しとグラブが綺麗に並んでいる(本人提供)

そして、他の取材でも多く話されているエピソードをここでも改めて話してくれた。今も変わらない最も印象的な出来事であるという。

「新しいグラブを買いに来た小学生の子がいて、その時使ってるグラブを持って来てくれました。見ると、全然使えるしサイズも合っている。なので、『磨いたらまだ使えるから頑張って使いな』と言ったらその子が泣き出してしまった。

せっかくお母さんを説得してようやく新しいグラブを買えると思ってきたのに、まだ使えるから買っちゃダメと言われるわけですよ(笑)。感情をどう表現していいかわからないから泣くしかないですよね。

『ごめんね。でも本当に使えるから頑張って使ってみて、使えなくなったらもう一回おいで』と言ったら2年後に来てくれたんです。確かにサイズも小さくなっていたので『何でも好きなの選びな!』と言って選んでもらいました。今でも忘れられないエピソードですね」

この出来事が口コミで広がり、宇佐美さんの人柄が知られる一つのきっかけになった。

「ご家族からチームに『ロクハチ野球工房では、グラブを磨いて大切に使いなさい』と言ってくれた。ちゃんと相談に乗ってくれるよって広めてくれたんです。口コミがきっかけで来てくださるお客様もおかげさまで増えました」

グラブを買いに来た少年とのエピソードは今も鮮明に残っている

宇佐美さんの接客スタイルは”売らずに売る”ことだという。それは、不動産営業での経験が基礎になっていた。

「アパートを専門で営業していた時に、オーナーさんへ一生懸命『買ってくれませんか』と言っていました。営業なので、売り込まないといけないという考えがあったので。でも、押せば押すほどお客さんがどんどん離れていくんです。

”これは何か違う”と思ったので、ある日オーナーさんにヒアリングをしたら、『まだ建て替えをせず、少しメンテナンスして数年後にまた考えた方がいいのではないでしょうか』と提案したんです。そしたらお客様が『あなた嘘つかない人だね。あなたから買いたいです』と言ってくれました」

その後、実際に建て替え時に購入してくれて販売が成立した。”押さない”というのはグラブにおいても同じだと考えたのだ。

「という事は”売っちゃダメ=押し売りはダメ”なんだなと。話を聞いて必要だったら売ればいい。必要じゃなければその通り言ってあげる。不動産での成功体験があったので、グラブでも一緒だと思いました。

真摯に向き合って対応していけば信用していただけますし、他の人にも紹介したくなる。そのおかげで広がっていきました」

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