先日、東京都内でビジネスカンファレンス「Cloudsign Re:Change Japan 2024 Spring」が開催された。
カンファレンス内では、昨年まで巨人の監督を務めた原辰徳さん(球団オーナー付特別顧問)が登壇。ビジネスマンに向けた特別セッションが行われた。
(写真 / 文:白石怜平)
組織のリーダーとしての経験を共有する場に
本カンファレンスは、弁護士ドットコム株式会社が提供する、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン®︎」による主催。
イベント中は様々な特別セッションが展開され、原さんは「常勝軍団を作り上げた組織マネジメントとリーダーシップ」をテーマに約40分語った。
MCを務めたのはフリーアナウンサーの中嶋絵美さん。原さんの紹介が行われ、舞台に向かう際には大きな拍手が沸き起こった。
第三次政権として巨人の監督を19年から5年務め、昨年限りでユニフォームを脱いだ原さん。現在は「日々新鮮な、自分の時間を持てています」と語る。
原さんは選手時代に長嶋茂雄・王貞治の”ON”の後を継いで巨人の4番を務め上げ、監督としては通算17年でリーグ優勝9回・日本一3回。
09年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では侍ジャパンを世界一に導いた名将で、18年には野球殿堂入りも果たした。
今回は原さんが長年務めた”組織のリーダー”としての経験を、ビジネスマンの方々に通ずるものとして特別に披露する場となった。
人生は多動的「思いがけないチャンスもあります」
話題はまずコーチでの巨人復帰から監督就任秘話を明かした。
原さんは95年に現役引退後は、野球解説者を経て99年に一軍野手総合コーチとして巨人に復帰した。翌年からはヘッドコーチを担当するなど、引退セレモニーで語った”夢の続き”の第一歩を踏み出した。
「現役を終わって2年目に長嶋監督から『コーチで戻ってきなさい』とオファーをいただくのですが『時期早尚です。もう少し時間をください』と言いまして、翌年もお話をいただいたので復帰することになりました」
ヘッドコーチ2年目を終えようとしていた01年終盤、ペナントレースも残り数試合となったある試合後のことだった。
コーチミーティングを終え一息ついていた時、監督付マネージャーから「長嶋監督がお呼びです」と言われ慌てて監督室へと向かった。
「部屋に入ったら長嶋監督が直立不動で立っていらっしゃって、手を差し出して『来年からは原監督だ!』と」
98年オフに長嶋さんからオファーを受けた際、「監督を男にしたい」という想いから再びユニフォームを着る決断をした。その時から”将来は自分が巨人の監督をやる”と考えたことは一度もなかった。
「何の前触れもありませんでした。ただ、人生というのは”多動的”というのがとても重要だと思います。また、チャンスというのは自分で思っているの他にも、思いがけないチャンスもあるわけですよね」
原さんはその場で長嶋監督が差し伸べた手をしっかり握った。「ガタガタ手が震えていたのを今でも覚えています」と当時の心境も語った。
この時、後に名将となる原辰徳”監督”が誕生したのだった。
監督とヘッドコーチによる立場の違いとは?
続いてはコーチ・監督との違いについて。まずはコーチ時代、選手や監督とどのように向き合ってきたかを、聴いている方たちの立場に照らし合わせながら話した。
「コーチというのは、私も監督になったから分かるのですが”中間管理職”なんですね」
コーチ時代は試合が終わると長嶋監督の元へ幾度となく足を運び、納得いくまで論議を多く重ねたという。コーチ時代、中管管理職ならではの苦労したエピソードの一部をここで紹介した。
「キャンプの時にA案・B案とあって監督はA案、僕はB案。ここで監督とヘッドコーチはとことん話し合うわけです。それで最終的に長嶋監督のA案について『分かりました』となりました。これを私が選手の前で話すわけです」
原ヘッドコーチからA案で行くことが発表され、聞いた選手の中には反対意見を持つ者もいる。その時にこうアプローチした。
「心の中では『俺だってBだと思ってるよ』という自分もいます。しかし、それを言ってしまったら組織は崩壊してしまいます。『今年のジャイアンツはA案だ。それでやってみようじゃないか』と疑いなく実行する。ただ、その点において中間管理職はすごく大変な部分だと思います」
原さんは後に監督となり、また違いが分かったという。
「監督、リーダーには決定権があります。自分が考えたことを貫ける信念だったり、傭兵戦術をしっかりしないといけないと思いますね」
ここで中嶋さんが、意見が割れた時に自身でどう消化したのかを訊いた。原さんは「2人で大いに議論します」とし、このように続けた。
「そこで納得します。納得しないのであれば『分かりました』と使ってはいけないです。納得した状態で前に進む。中間管理職にも信念がないとダメですよね。中途半端に忖度したっていい組織にはならないのではないかなと思います」
そして、会は後半に。続いては長きにわたり巨人を背負っているあの選手やWBCで交わった大スターとのエピソードを披露する。
(つづく)
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